建設業経理士は意味ない?取った側と頼んだ側の両方にいた経理担当が話す、会社の本音
「建設業経理士の2級、受けてみない?」
社長や先輩からそう言われて、「考えておきます」と返した。命令ではないけれど、断るという選択肢はあまりなさそうな空気だった——。そんな状況で、このページにたどり着いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
調べてみると、出てくるのは「意味ない」「取っても評価されなかった」という声ばかり。こうした体験談は、嘘ではありません。実際にそう感じた人がいるのは本当のことです。
一方で、「会社はなぜ、この資格をそんなに欲しがるのか」をきちんと説明してくれる人は、なかなかいませんよね。
私は建設会社の経理担当として建設業経理士を取った一人で、事務員さんに「取ってほしい」と頼んだ側でもあります。この記事では、その両方の立場から、会社の本音を正直にお話しします。
先に結論です。
合格すると、あなたは会社の点数(経審=経営事項審査)に数えられる人になります。会社にとっての意味は、ここではっきりしています。でも、あなたの手当や評価が上がるかどうかは、会社しだいです。だから、取る前に会社に聞いてください。
あなたはどれに近いですか?
- まだ取っていない・会社にすすめられて迷っている → 「返事の前に会社に聞いておきたい4つのこと」へ
- 取ったのに報われないと感じている → 「すでに取ったのに『意味なかった』と感じている方へ」へ
- 建設業の外でも通用するかを知りたい → 建設業経理の経験は転職で評価される?「潰しが利かない」と言われる理由と、外での呼ばれ方
どれか決めきれない方は、このまま順番に読んでください。
「建設業経理士は意味ない」と言われる理由は、ほとんどが2つ
「意味ない」「役に立たない」という声を一つずつ読んでいくと、理由はおおむね次の2つにまとまります。
取っても手当や給料がほとんど変わらないことがある
Yahoo!知恵袋やnoteの体験記を読むと、こんな声が見つかります。
- 毎月の資格手当は数千円ほどだった
- 合格したときの一時金だけで、毎月の手当はなかった
- 手当そのものがなかった
- 社内では「持っていて当然」という扱いだった
※いずれも個人の体験や、その人の会社の例です。「相場」ではありません。
何か月も夜や休日を使って勉強して、返ってきたのがこれだったら、「意味なかった」と感じるのは自然なことです。この声を否定するつもりはありません。
建設業の外では評価されにくい
建設業経理士は、建設業の会計に特化した資格です。そのぶん、業界の外では、日商簿記ほど名前が知られていません。別の業界に転職しようとしたとき、「それは何の資格ですか?」と聞かれることもあります。
業界の外での評価が気になる方は、こちらで詳しくまとめています。

この2つは、どちらも「あなたへの見返り」と「業界の外での値段」の話です。会社にとって意味がない、という話ではありません。では、会社にとっての意味とは何なのか。次で、頼んだ側の本音をお話しします。
会社はなぜ建設業経理士を欲しがるのか
私が事務員さんに「取ってほしい」と頼むとき、会社側として考えているメリットは、次の3つです。
- 経審の点数
- 社内の経理業務のレベルアップ
- 社員個人の知識のレベルアップ
一つずつ、事務員さんの側から見える言葉に直してみます。
経審(会社の成績表)の点数に入るから
経審とは、正式には経営事項審査(けいえいじこうしんさ)といいます。公共工事の入札に参加する会社が毎年受ける、会社の成績表のようなものです。この点数が、入札に参加できる工事の範囲などに関わってきます。
この成績表には「経理の状況」という項目があり、その中で建設業経理士の人数が数えられます。押さえておきたいのは、次の3点だけです。
| ポイント | 中身 |
| 数えられる級 | 2級と1級だけ(3級・4級は数えられません) |
| 数え方 | 1級は1人分、2級は0.4人分として数えます(国土交通省の基準) |
| 会社の規模との関係 | 会社の規模が小さいほど、1人の資格の重みが大きくなりやすい |
つまり、中小の建設会社ほど「事務員さんが1人合格する」ことの意味が大きいのです。なお、2026年7月に経審のルールが一部変わりましたが、この資格の扱いは変わっていません。
点数の仕組みをもう少し詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ。

経理のレベルと、あなたの知識も上げたいから
2つめと3つめは、まとめてお話しします。会社としては、社内の経理の質を上げたいという狙いがあります。そしてそれとは別に、取る人自身の知識が伸びることも、頼む側として本当に考えています。
ただ、知識が伸びたことが給料や評価に返ってくるかは、また別の話です。それは次の章でお話しします。
会社は「有資格者がいなくなること」を気にかけている
経審の点数は、資格を持つ人が会社を辞めたり、合格から年数がたって点数に入らなくなったりすると、そのぶん下がる可能性があります。
私のいる会社では、それで点数が動いたことは今のところありません。ただ、影響が大きいので、そうならないように注意しています。
頼む側の会社にとって、有資格者の人数は「気づいたら減っていた」では困るもの、ということです。
あなたの資格は、会社が気にかけて管理するほどのものです。だから、取る前に条件を聞くのは当然のことです。
会社の点数には入る。あなたの手当や評価は会社しだい
ここまでで、会社にとっての意味ははっきりしました。では、それはあなたに返ってくるのでしょうか。
返ってきた会社と、返ってこなかった会社
まず、2つの例を並べます。
| 返ってきた例(私の場合) | 返ってこなかった例(公開されている体験記より) | |
| 受け止め | 「非常に評価された」と感じた | 「思っていたのと違う」と感じた |
| 給料 | 資格手当などで給与に反映された | 毎月の手当は数千円ほどだった |
| 社内の見方 | 経理の基礎知識があると認識され、より重要な仕事を任されるようになった | 「持っていて当然」という扱いだった |
※右の列は、noteやyahoo知恵袋などの声をまとめたものです。書き手の方は、それでも取ったことを後悔はしていないと書かれています。
どちらも、本当にあったことです。私の会社ではたまたま左の列のようになった、というだけで、取れば必ず評価される、という話ではありません。
違いは会社の決まりと運用。だから取る前に聞けば分かる
では、何が左右を分けるのでしょうか。
- 会社の点数に入るかどうかは、国のルールで決まっています。2級以上に合格していて、合格からの年数や、その会社で働いていることなどの条件を満たしていれば、どの会社でも国の基準どおりに数えられます
- あなたの手当や評価は、その会社の決まり(就業規則や給与の規程)と、ふだんの運用で決まります。会社によってまったく違います
会社の得は国のルールで決まるのに、あなたへの見返りは会社ごとにばらばら。このずれが、「意味なかった」と感じる正体です。
手当は毎月続く支払いなので、金額や出し方は会社によって大きく違います。だからこそ、黙って取って期待するより、取る前に確かめておくほうが、あとでがっかりせずに済みます。
逆に言えば、少なくとも手当や費用の扱いは、取る前に聞けば分かることがほとんどです。
返事の前に会社に聞いておきたい4つのこと
私のいる会社で、取った人に返しているのは「受験料」「講座やテキスト代」「合格したときの一時金や毎月の手当」です。これに、事務員さんにとっていちばん負担の大きい「勉強の時間」を加えた4つを、そのままメモに写せる形にしました。
【会社に聞くことメモ】
- □ 受験料は会社が出してくれるか
- □ 講座やテキスト代は会社が出してくれるか
- □ 合格したときの一時金や、毎月の資格手当はあるか
- □ 勉強の時間について相談できるか(忙しい時期など)
1. 受験料は会社が出してくれるか
2級の受験料は7,120円です(2026年9月の第39回試験の場合。申込前に公式サイトでもご確認ください)。会社が出してくれるのか、自分で払うのか。払った場合、合格したら戻ってくるのか、不合格でも出してもらえるのか。このあたりを確かめておきましょう。
2. 講座やテキスト代は会社が出してくれるか
独学でテキストを買うのか、通信講座を使うのかで、かかる費用は大きく変わります。「どこまで出してもらえるか」で、勉強の進め方そのものが変わるので、早めに聞いておきたい項目です。
3. 合格したときの一時金や、毎月の資格手当はあるか
金額は、会社によってまったく違います。一時金だけの会社もあれば、手当そのものがない会社もあります。だからこそ、取る前に聞いておく価値があります。
あわせて知っておいてほしいのは、取ったあとに毎年お金がかかるわけではないということです。会社の点数に数え続けるための講習が必要になるのは、合格から5年を過ぎてから(その後は5年ごと)で、資格そのものは一生有効です。
4. 勉強の時間について相談できるか(忙しい時期など)
建設会社の事務には、決算の時期や経審の書類をつくる時期など、どうしても忙しくなる時期があります。
「その時期は勉強が進まないかもしれない」「試験前の数週間は、残業を少し控えられると助かる」など、配慮してもらえることがあるか、相談してみるのがおすすめです。会社の側も、事情を知っていれば仕事の割り振りを考えやすくなります。
聞き方の例と、返事を急がなくていい理由
「お金のことを聞いたら、やる気がないと思われるのでは」と心配な方もいるかもしれません。前向きに考えている人の質問として聞けば、角は立ちにくいものです。たとえば、こんな聞き方があります。
- 「前向きに考えたいので、先に受験料やテキスト代の扱いを確認させてください」
- 「合格したときの手当などについて、決まりがあれば教えてもらえますか」
- 「決算の時期と勉強が重なりそうなので、その時期の進め方を相談させてください」
そして、返事を急ぐ必要はありません。次の試験は2027年3月14日(日)で、申込は2026年11月10日(火)〜12月10日(木)です。今(9〜10月)すすめられたのなら、条件を確かめてから返事をする時間は十分にあります。
答えに納得できなければ、「今は取らない」も選べる
聞いた答えに納得できなかった。あるいは、今年は家庭の事情でどうしても時間が取れない——。そんなときは、今回は見送るという選択もあります。罪悪感を持つ必要はありません。
見送るときは、たとえばこう伝えることができます。
- 「今年は難しいのですが、次の試験なら考えたいです」
- 「◯月以降なら勉強の時間が取れそうなので、その後の試験を目指したいです」
試験は年2回(9月・3月)あります。今回見送っても、会社で働き続けながら、条件が整ったときに受ければいいのです。
すでに取ったのに「意味なかった」と感じている方へ
ここからは、すでに2級以上を持っている方に向けたお話です。
まず、今も会社の点数に入っているかを確かめる
建設業経理士は、合格してから、合格した年度の翌年度4月1日を起点に5年がたつまでは、講習を受けなくても経審で数えられます。この期間なら、今まさに会社の点数の計算に数えられています。
5年を過ぎている場合は、登録経理講習(建設業経理士の知識を更新するための講習)を受けていないと、会社の点数には入りません。ただし、資格そのものが消えるわけではありません。講習を受けて修了すれば、また数えられるようになります(その後は5年ごとに講習を受けます)。
講習の受講料は18,000円(税込・2026年9月時点)です。講習が必要な時期に来ているなら、この費用を会社が持ってくれるかも、あわせて聞いておきたい項目になります。
自分の資格が今どう扱われているかは、社内で経審の書類をつくっている担当者に聞けば、すぐに分かります。「今も点数に入っている」と分かれば、それは会社と話すときの立派な材料になります。
資格を社内でどう生かすか
資格を「持っているだけ」で終わらせず、社内での役割にどうつなげていくかは、こちらの記事でまとめています。

よくある質問(Q&A)
Q. 3級・4級でも会社の点数に入りますか?
答え:入りません。経審で数えられるのは、2級と1級です。
理由:経審の基準で対象になっているのが、1級と2級だけだからです。
実務での注意点:3級・4級は、基礎を固めるための資格としては役に立ちます。ただ、会社から「点数のために」と頼まれているなら、目標は2級です。
Q. 講習を受けないと、資格がなくなって受け直しになりますか?
答え:なりません。資格そのものは一生有効です。
理由:講習を受けないと起きるのは、合格した年度の翌年度4月1日を起点に5年を過ぎたあと、会社の点数に数えられなくなることです。資格そのものは消えず、講習を受けて修了すれば、また数えられるようになります。
実務での注意点:講習の受講料は18,000円(税込・2026年9月時点)です。合格から5年が近づいたら、受けるかどうか・費用を誰が持つかを、会社と話しておくと安心です。
Q. 1級まで取ってほしいと言われました。2級と何が違いますか?
答え:会社の点数では、1級は1人分、2級は0.4人分として数えられます。
理由:国の基準で、1級のほうが重く数えられるからです。さらに、1級の人(合格から5年以内か、講習を受けた人)が会社の経理の責任者として決められた書類に署名して出すと、2級ではできない形で会社の点数をもう少し上げられる仕組みもあります。会社が「できれば1級まで」と言う理由の一つです。
実務での注意点:どちらから目指すかは、簿記の経験などによって変わります。級の違いは建設業経理士1級・2級・3級の違いと選び方、点数への影響は建設業経理士を取ると会社の点数が上がる理由で詳しく説明しています。
Q. 会社を辞めたら、取った資格は無駄になりますか?
答え:無駄にはなりません。資格はあなた自身のもので、会社を変わっても消えません。
理由:建設業経理士は会社ではなく個人が合格するものです。別の建設会社に移っても、合格したという事実はそのままあなたについていきます。
実務での注意点:業界の外でどう見られるかは、また別の話です。気になる方は建設業経理の経験は転職で評価される?を参考にしてください。
まとめ
- 「意味ない」という声の多くは、あなたへの見返りと業界の外での値段の話。会社にとって意味がない、という話ではありません
- 合格すると、あなたは会社の点数(経審)に数えられる人になります。でも、手当や評価が上がるかどうかは会社しだいです
- だから、取る前に会社に聞く。それが、あとでがっかりしないためのいちばんの近道です
今日できることは、ひとつだけです。返事の前に、会社に聞く4つのこと(受験料/講座・テキスト代/一時金や手当/勉強の時間の相談)をメモしてください。
答えを聞いたうえで「今は取らない」と決めるのも、立派な判断です。どちらを選んでも、あなたが納得して決めたのなら、それが正解です。
取ると決めたら
まずは、2級と1級のどちらから始めるかを確認しましょう。

2級に決めたら、難易度と勉強の進め方はこちらです。

テキスト選びは、こちらで比較しています。

