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着手金・中間金・残金の請求書の書き方|最終請求書の差し引き方と仕訳を同じ数字で追う【建設業】

daisen

「○○商事さんの工事、契約したから着手金の請求書を出しておいて。3回に分けてもらうことになってるから」

そう頼まれて前任者の雛形を開いたら、1回で全額を請求するものしかなかった——。そんな場面で手が止まっていませんか。

  • 工事が始まる前の請求書に、何の代金と書けばいいの?
  • 2回目・3回目の請求書に、前に受け取った分をどう書くの?
  • 入金されたけれど、売上にしていいの?

請求書と仕訳の説明が別々で、流れが見えずに迷う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、1つの工事の数字を最初から最後まで使って、請求書3枚と仕訳を順番どおりに追います。最後に出す請求書(最終請求書)の書き方が、いちばんの答えです。

着手金・中間金・残金に分けた請求書を作ってきて、新しく経理を担当した方から「何の科目を使えばいいの?」「そもそもどう処理するの?」と聞かれることが多かった、建設業経理15年以上のだいせんがまとめました。

着手金・中間金・残金の請求書3枚と仕訳——全体の流れを1枚の表で

この記事で使う例の工事(架空)

着手金・中間金・残金は、契約時や工事の途中で代金を分けて受け取るときの呼び方です。ここからはこの記事の例として次の工事を使います(会社名・金額は架空)。

項目内容・金額
発注者・工事名○○商事株式会社 店舗改装工事
工事代金(税抜)10,000,000円
消費税(10%)1,000,000円
請負金額(税込・契約書に記載)11,000,000円
支払条件着手時3割・中間時3割・完成時4割
① 着手金(3割)3,300,000円
② 中間金(3割)3,300,000円
③ 残金(4割)4,400,000円

筆者の経験では、分け方は3:3:4の割合が多く、割合は契約書に記載された税込の請負金額にかけていました。ただし契約によって違いますので、自社の契約書の支払条件に書かれた金額に合わせてください。

3枚の請求書と仕訳の時系列表

場面請求書(今回請求額)帳簿でやること未成工事受入金の残高
契約・着手①着手金 3,300,000円—0円
着手金の入金—未成工事受入金3,300,000円
工事の途中②中間金 3,300,000円—3,300,000円
中間金の入金—未成工事受入金6,600,000円
完成・引渡し③残金 4,400,000円売上へ振り替え0円
残金の入金—完成工事未収入金を消す0円

最終請求書の下段は、この1行です。

請負金額 11,000,000円 − 受領済み額 6,600,000円 = 今回請求額 4,400,000円

工事が終わるまでに受け取ったお金は、売上ではなく未成工事受入金(工事が終わる前に受け取った工事代金。一般の会社の「前受金」にあたるもの)で預かっておきます。売上と消費税の時期は、入金した日ではなく完成・引渡しの日です。引渡しの日は、作業を終えた日・検収が終わった日など、会社が毎回同じ基準で使っている日です。

※完成した部分ごとに引き渡して、その都度代金を受け取る契約では、その部分が先に売上になることがあります。工事進行基準を使っている会社は、消費税もその基準で申告できます。どちらも契約書を持って顧問税理士にご確認ください。

なぜ預かりにするのかと、建設業の科目の全体像は、図解の記事で確認できます。

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着手金と中間金の請求書の書き方——見本2枚と、入金したときの仕訳

見本① 着手金の請求書

項目書く内容
宛名○○商事株式会社 御中
件名店舗改装工事 着手金(第1回/全3回)
請負金額(税込)11,000,000円
支払条件着手時3割・中間時3割・完成時4割
今回請求額3,300,000円

契約で決めた支払条件どおりなら、工事が始まる前でも請求できます。何の代金の何回目かを件名に書くのがポイントで、番号・発行日・振込先などは、ふだんの請求書と同じです。

※消費税の内訳を書く場合は「うち消費税相当額300,000円」程度にとどめ、「消費税は完成・引渡しのときに、工事全体の金額で計算します」と添えておきます。

見本② 中間金の請求書

項目書く内容
件名店舗改装工事 中間金(第2回/全3回)
請負金額(税込)11,000,000円
受領済み額3,300,000円(着手金)
今回請求額3,300,000円
今回のお支払い後の残り4,400,000円

筆者は、中間金の請求書に「受領済み額」と「今回のお支払い後の残り」を書いていました。この2行があれば、あといくら残っているかが1枚で分かります。

着手金・中間金の請求書は、インボイスにしないといけない?

インボイス(適格請求書=登録番号や消費税額を書いた、決められた形の請求書)を交付する義務が生じるのは、工事の場合完成・引渡しのときです。着手金・中間金の請求書をインボイスにする義務はありません。

※着手金の請求書をインボイスとして出すこともできますが、その場合は引渡しのときに修正した請求書が必要になることがあります。自社の請求書の様式とあわせて、顧問税理士にご確認ください。

着手金・中間金が入金されたときの仕訳

借方は仕訳の左側、貸方は右側のことです。

場面左側(借方)右側(貸方)左右の合計
① 着手金の入金普通預金 3,300,000未成工事受入金 3,300,0003,300,000
② 中間金の入金普通預金 3,300,000未成工事受入金 3,300,0003,300,000

受け取った時点では、まだ消費税の計算に入れません(引渡しのときに工事全体でまとめて計算します)。だから税込額のまま未成工事受入金にします。中間金の入金後の残高は6,600,000円です。

この記事の例は引渡しが完成時の1回なので、中間金も受け取った時点では売上になりません。中間金を完成工事未収入金に入れない理由は完成工事未収入金と売掛金の違いで説明しています。

※この記事は、受け取ったときは消費税を分けず、引渡しのときにまとめて計上する形で説明します。受け取ったときに消費税を分けて記帳する設定の会社もあるので、形が違う場合は顧問税理士にご確認ください。

ちなみに、工事が終わる前に受け取ったお金が未成工事受入金、工事が終わる前に自社がかけた費用(材料費・外注費など)が未成工事支出金です。

最終請求書での着手金・中間金の差し引き方——完成・引渡しの仕訳と答え合わせまで

筆者は最後の請求書に、上段には工事全体の税抜・消費税・税込を、下段には「請負金額 − 受領済み額 = 今回請求額」を書いていました。

見本③ 最終請求書

件名:店舗改装工事 残金(第3回/全3回)

上段(工事全体の金額)

項目金額
工事代金(税抜)10,000,000円
消費税(10%)1,000,000円
請負金額(税込)11,000,000円

下段(今回の請求額の計算)

項目金額
請負金額(税込)11,000,000円
受領済み額(着手金3,300,000円・中間金3,300,000円)−6,600,000円
今回請求額4,400,000円

上段に工事全体の金額を書くのはなぜ?

インボイスに書く「税率ごとの金額」と「消費税額」は、その取引(工事全体)の金額で書くもので、「今回いくら振り込んでほしいか」ではありません。だから上段は工事全体、下段で差し引きます。

受け取り済みの着手金・中間金は、値引きではなく代金の一部を先に受け取っただけです。上段の消費税1,000,000円は減らしません。

※受領済み額の差し引き行は、上段の消費税の計算に入れない行として書きます。請求書ソフトでの設定は、お使いのソフトの案内と顧問税理士にご確認ください。

完成・引渡しの仕訳と、3つの数字で答え合わせ

完成工事高は建設業での売上、完成工事未収入金はまだ入金されていない工事代金(一般の会社の売掛金にあたるもの)です。

場面左側(借方)右側(貸方)左右の合計
③ 完成・引渡し未成工事受入金 6,600,000/完成工事未収入金 4,400,000完成工事高 10,000,000/仮受消費税等 1,000,00011,000,000
④ 残金の入金普通預金 4,400,000完成工事未収入金 4,400,0004,400,000

③は税抜経理(消費税を「仮受消費税等」で分けて記帳する方法)の例です。税込経理なら③の右側は「完成工事高 11,000,000」の1行になります(左右の合計11,000,000)。納める消費税の額はどちらの方式でも同じです。

最後に3つを確かめます。

  • □ 最終請求書の今回請求額 4,400,000円 = 帳簿の完成工事未収入金 4,400,000円
  • □ ③のあと、未成工事受入金の残高が 0円(6,600,000 − 6,600,000)
  • □ 入金の合計 3,300,000 + 3,300,000 + 4,400,000 = 11,000,000円 = 請負金額(税込)

どれかが合わなければ、請求書か仕訳を見直す合図です。最終請求書を出す前に、この3つを見ておくと安心です。

残金の入金の消し込み(複数の工事の代金がまとめて振り込まれたときなど)は完成工事未収入金の記事をご覧ください。

公共工事の「前払金」は、保証会社を通す別の手続きです
民間工事では着手金、公共工事では前払金と呼ぶことが多いです。公共工事では、「公共工事の前払金保証事業に関する法律」にもとづき国土交通大臣の登録を受けた保証会社(保証事業会社)の保証を受けるなど、手続きが違います。発注者と保証会社の案内を確認してください。参考:公共工事の前払金保証事業に関する法律(e-Gov法令検索)

よくある質問(Q&A)

Q. 請求書に「着手金」「前受金」と書かないといけませんか?

答え:何の代金の何回目の請求かが分かるように書くのがおすすめです。

理由:「着手金(第1回/全3回)」と書いておけば、相手の会社も自社も、あとで確かめやすくなります。

実務での注意点:契約書の支払条件と同じ呼び方にそろえると、照らし合わせが楽です。

Q. 受領済み額を差し引く行は、何と書けばいいですか?△(マイナス)でもいいですか?

答え:「受領済み額」「既にお支払いいただいた額」など、何を差し引いたか分かる名前なら、△でも行を分けても構いません。

理由:大事なのは、上段に工事全体の金額と消費税が正しく書かれていることです。

実務での注意点:受領済み額の内訳(着手金・中間金の金額)を添えると、相手の会社が照らし合わせやすくなります。

Q. 着手金の請求書もインボイスとして出しています。最終請求書はどう書けばいいですか?

答え:この場合は、これまでの請求書を持って顧問税理士にご確認ください。

理由:見本③は、最終請求書で工事全体の金額と消費税を書く形です。前の請求書もインボイスとして出している場合は、書き方が変わることがあります。

実務での注意点:請求書ソフトで登録番号が自動で印字される設定かどうかも、あわせて確認しましょう。

Q. お客様が個人(施主)の工事でも、同じ書き方でいいですか?

答え:請求書3枚の流れと仕訳は同じです。

理由:インボイスの交付義務は、相手が課税事業者で、交付を求められた場合に生じるものです。個人のお客様(事業をしていない施主)は課税事業者ではないので、インボイスとして交付する義務はありません。ただし、個人事業主のお客様で課税事業者の方から求められた場合は、交付する義務があります。

実務での注意点:迷ったら、顧問税理士に確認しておくと安心です。

まとめ

  • 迷ったら「工事が終わるまでは預かり、終わったら売上」の一言に戻る
  • 着手金・中間金は、税込額のまま未成工事受入金で預かる
  • 最終請求書は、上段に工事全体の金額、下段に「請負金額 − 受領済み額 = 今回請求額」
  • 最後は「今回請求額 = 完成工事未収入金」で答え合わせ

今日できることは、ひとつだけです。次の最終請求書の雛形に、上段(工事全体の金額)と下段(請負金額 − 受領済み額 = 今回請求額)の欄を作っておいてください。

一度流れをつかめば、次の工事からはひとりで回せます。

最終請求書の雛形ができたら、次はこちら

残金が入金されるまでの完成工事未収入金の管理(工事ごとの管理、複数の工事の代金がまとめて振り込まれたときの消し込み)は、こちらです。

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出典

  • 国税庁 タックスアンサーNo.6165「前受金や前払金などがあるとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6165.htm
  • 国税庁 消費税法基本通達9-1-5・9-1-6・9-1-8(請負による譲渡等の時期) https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/09/01/02.htm
  • 国税庁 タックスアンサーNo.6161「工事進行基準を用いているとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6161.htm
  • 国税庁 タックスアンサーNo.6375「税抜経理方式または税込経理方式による経理処理」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6375.htm
  • 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(令和8年5月改訂)問33・問39・問40・問54 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf
  • e-Gov法令検索「公共工事の前払金保証事業に関する法律」 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC0000000184

※2026年10月時点の情報です。

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 初めまして!「建設業経理と実務の教科書」ブログの筆者のだいせんです。 私はこれまで15年以上、建設業界で経理を中心に、契約業務・総務・採用など幅広い業務を経験してきました。建設業経理士1級や日商簿記検定1級を取得し、地元の工務店から全国規模の企業まで幅広く実務を積んでいます。その中で感じたのは、経理・事務担当者が「実務の疑問を気軽に相談できる相手が少ない」という現実です。教科書ではわかりにくいことや現場ごとに異なる対応が求められることも多く、安心して調べられる場所が必要だと考え、このブログを開設しました。経理や事務の基本解説から制度改正への対応、日々の業務改善のヒントまで、実務に役立つ情報をやさしく発信していきます。あなたの業務の一助となれば幸いです。
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