建設業の入金サイト・支払サイトとは?手形・振込の確認方法
先輩に「この請求書、入金サイトが2ヶ月だから」とさらっと言われて、頭の中が「?」でいっぱいになった——そんな経験はありませんか。「サイトって何ですか」と聞き返したかったけれど、あまりにも当たり前のように使われていて、今さら聞けなかった。もし心当たりがあっても、大丈夫です。「サイト」は建設業の経理で毎日のように出てくる言葉ですが、意味さえ分かってしまえば、こわいものではありません。
この記事では、「サイト」という言葉の意味からはじめて、自社が今月「払うお金」と「もらうお金」を横に並べて確認する方法、締め日から支払日までの日数の数え方、そして手形・振込・でんさいで受け取ったお金が「いつ現金になるか」の見分け方まで、あなたが自分の手を動かして確認できるように順番に整理していきます。読み終わるころには、「サイトってこういうことか」と、一つ自信を持って先輩や上司と話せるようになっているはずです。
建設業の入金サイト・支払サイトとは?
まずは、いちばんの引っかかりポイントである「サイト」という言葉から、ゆっくりほどいていきましょう。
「サイト」は英語のsiteではない。締め日から支払いまでの期間を指す業界用語
「サイト」と聞くと、ホームページ(ウェブサイト)や工事現場(site)を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。でも、経理で使う「サイト」は、それらとはまったく別の言葉です。
取引の代金を、締めてから実際にお金が動くまでの「期間(日数)」のことを、業界では「サイト」と呼びます。英語の site(場所)ではなく、もともとは手形などで使われてきた金融・商慣習の用語です。「サイトが長い・短い」というのは、「お金が動くまでの期間が長い・短い」という意味だと覚えてください。
たとえば先輩の言った「入金サイトが2ヶ月」は、「代金を締めてから、実際に入金されるまで約2ヶ月かかる」という意味です。場所の話でもホームページの話でもなく、「お金が入ってくるまでの待ち時間が2ヶ月」ということだったのですね。
ここで、あわせて「締め(締め日)」という言葉も押さえておきましょう。「締め」とは、ある期間の取引をいったん区切って合計する日のことです。たとえば「末締め」なら、毎月末日でその月の取引をまとめて区切ります。「20日締め」なら、毎月20日で区切ります。この締め日を起点にして、そこから何日後に払う(もらう)かを表したのが「サイト」だ、とイメージするとつながりやすくなります。
入金サイトと支払サイト、買い手・売り手で呼び方が変わる
「サイト」には、立場によって2つの呼び方があります。ここがもう一つのつまずきポイントなので、表で整理します。
| 呼び方 | どちらの立場か | 意味 |
| 入金サイト(回収サイト) | お金をもらう側(売り手) | 自社が請求してから、代金が入金されるまでの期間 |
| 支払サイト | お金を払う側(買い手) | 請求を受けてから、代金を支払うまでの期間 |
同じ一つの取引でも、お金をもらう自社から見れば「入金サイト」、お金を払う相手から見れば「支払サイト」になります。裏表の関係だと考えると分かりやすいですね。
建設業の事務員が混乱しやすいのは、自社が「もらう立場」と「払う立場」の両方を同時に持っているからです。元請けからお金をもらうときは「入金サイト」を気にし、協力会社(下請け)や資材業者に払うときは「支払サイト」を気にする。1つの会社の中で、両方のサイトが動いているのです。だからこそ、次の章のように「もらうお金」と「払うお金」を横に並べて見ることが大切になります。
「支払いが先・入金が後」——自社の入出金を横並びで見るカレンダーとサイトの数え方
建設業でよく言われるのが、「支払いが先、入金が後」という言葉です。元請けからの入金を待っているあいだに、協力会社への支払いが先に出ていってしまう——この構造に、うっすら不安を感じている方もいるのではないでしょうか。この章では、その不安の正体を「自分の手元のカレンダー」で見える化していきます。
締め日から支払日までの日数の数え方(「末締め翌月末払い」「末締め翌々月末払い」を自分で計算するコツ)
まず、サイトの日数を自分で数えられるようになりましょう。コツは、「締め日」と「支払日」の2つの日付を決めて、そのあいだを数えるだけです。
代表的な支払条件を、日数に置き換えてみます。
| 支払条件 | 意味 | サイト(おおよその日数) |
| 末締め翌月末払い | 月末で締めて、翌月の末日に支払う | 約30日 |
| 末締め翌々月末払い | 月末で締めて、翌々月の末日に支払う | 約60日 |
| 20日締め翌月20日払い | 20日で締めて、翌月20日に支払う | 約30日 |
数え方のコツは、「締め日の翌日」から「支払日」までを数えることです。ただし、実務では「締めてから何ヶ月後の支払いか」でざっくり把握できれば十分な場面が多いので、まずは次のように覚えてしまいましょう。
- 翌月払い=サイト約1ヶ月(約30日)
- 翌々月払い=サイト約2ヶ月(約60日)
先輩の言った「入金サイト2ヶ月」は、多くの場合この「末締め翌々月末払い」を指しています。「うちは末締め翌々月末払いだから、3月に締めた分は5月末に入る」——こう言い換えられれば、もう自分の言葉でサイトを説明できています。
実務での注意点:同じ「翌月末払い」でも、月によって日数は28〜31日と少しずつ変わります。「約30日」「約60日」というのはあくまで目安です。正確な入金日・支払日をカレンダーに書き込むときは、月の日数までは気にせず、「何月の何日に動くか」という日付そのものを押さえるのが実務的です。
今月「払うお金」「もらうお金」を横に並べてみる(記入例つきミニカレンダー)
サイトの数え方が分かったら、次は「支払いが先・入金が後」を自分の目で確かめてみましょう。やることはシンプルで、今月動くお金を「もらうお金」と「払うお金」に分けて、日付順に横並びの表に書き出すだけです。
たとえば、こんな会社があるとします。
- 元請けからの入金条件:末締め翌々月末払い(入金サイト約60日)
- 協力会社(下請け)への支払条件:末締め翌月末払い(支払サイト約30日)
3月末に工事分を締めた場合、お金の動きを1枚の表にすると次のようになります。
| 日付 | 区分 | 内容 | 金額(例) |
| 4月30日 | 払うお金(出ていく) | 協力会社への外注費(3月末締め・翌月末払い) | 100万円 |
| 5月31日 | もらうお金(入ってくる) | 元請けからの入金(3月末締め・翌々月末払い) | 150万円 |
見てください。同じ3月の工事から生まれたお金なのに、協力会社への支払い(4月末)のほうが、元請けからの入金(5月末)より1ヶ月も早く出ていくのです。この「支払いが先・入金が後」で生まれる1ヶ月分は、自社の手元のお金で立て替えることになります。これが、建設業の資金繰りが「厳しい」と言われる理由の正体です。
不安に思う必要はありません。この構造を知っておくこと自体が、立派な備えです。自分の会社の1ヶ月分を、上のような「もらう・払う横並び表」に書き出しておけば、「いつ、いくら足りなくなりそうか」が前もって見えます。見えていれば、社長や上司に「この時期、支払いが先行しますね」と一言添えられる。それだけで、事務員として大きな価値があります。
この表を作るとき、「もらうお金」の側は、まだ入金されていない売上(元請けへの請求分)が中心になります。建設業ではこれを完成工事未収入金(一般の売掛金にあたるもの)という科目で管理します。反対に「払うお金」の中には、まだ完成していない工事のために先に出ていく材料費・外注費もあり、これは未成工事支出金という科目でいったん資産として持っておきます。科目の詳しい意味を知りたい方は、完成工事未収入金は「完成工事未収入金と売掛金の違い」、未成工事支出金は「未成工事支出金とは」で解説しています。まずは「もらう予定=完成工事未収入金」「先に払う分=未成工事支出金」とだけつかんでおけば十分です。
今日、あなたの会社の数字で、この表を作ってみましょう
上の表は、あくまで説明のための例です。同じことを、あなたの会社の「締め日」「支払日」に置き換えて、今月分だけでいいので手元のノートやExcelに書き出してみてください。「いつ・いくら払うお金があって」「いつ・いくら入るお金があるか」を横に並べるだけで、資金繰りの見通しは驚くほどクリアになります。難しく考えず、まずは今月の分だけ、今日中に書いてみることをおすすめします。
なお、ここで作った「横並び表」は、あくまで自社の手元で今月の入出金を見るためのものです。これとは別に、「そもそも建設業のお金は、元請け→協力会社(下請け)→孫請けへと、会社から会社へどんな順番で流れていくのか」という縦の流れの全体像を知りたい方もいるでしょう。その会社間のお金の流れや支払期日のルールは、次の記事で図解しています。「自社の入出金を横で見る」この記事と、「会社間でお金がどう流れるかを縦で見る」次の記事を、あわせて読むと立体的に理解できます。

手形・振込・でんさいの確認手順(現金化のタイミングを見分ける)
入金・支払いのサイトが分かってきたら、次は「その代金が、どんな形で・いつ現金になるか」です。建設業では、振込のほかに「手形」や「でんさい」でお金がやり取りされることがあり、それぞれ現金になるタイミングが違います。ここを見分けられるようになりましょう。
まず、3つの受け取り方を1枚の表で比べます。
| 受け取り方 | どんなもの | 現金になるタイミング | つまずきやすい点 |
| 振込 | 銀行口座に直接お金が入る | 支払期日に口座へ着金 | 「サイト=締めから入金までの期間」の理解でつまずく |
| 約束手形(紙) | 「期日に払います」という約束の紙 | 手形に書かれた期日に現金化(通常は期日前に取引銀行へ「取立て」を依頼しておく) | 「銀行に持っていけばいいのか」「いつ現金になるのか」が分からない |
| でんさい(電子記録債権) | 手形を電子データにしたような仕組み | 支払期日に、自動で口座間決済される | 手形と何が違うのか整理できていない |
ポイントは、振込はその日に着金するのに対し、手形とでんさいは「期日まで待つ」という点です。手元に紙やデータが来ても、すぐ現金になるわけではない、というのが最初の分かれ道になります。では、それぞれの見方を順に押さえましょう。
振込の場合:支払期日の見方
いちばんシンプルなのが振込です。取引の支払条件(例:末締め翌々月末払い)で決まった支払期日に、銀行口座へお金が入ります。事務員として確認するのは、次の2点です。
- 契約や注文書に書かれた支払条件(締め日と支払日)
- そこから計算した支払期日が、いつになるか
たとえば「末締め翌々月末払い」で3月末に締めた分なら、支払期日は5月末。カレンダーに「5/31 元請け入金予定」と書き込んでおけば、当日に着金しているかを通帳で確認できます。振込は、期日にそのまま口座に入るぶん、いちばん見通しが立てやすい受け取り方だと言えます。
約束手形を受け取ったら最初に確認する3つのポイント
取引先から手形を受け取ると、「この紙、どうすればいいの?」と戸惑うかもしれません。まず落ち着いて、次の3つだけ確認しましょう。
そもそも約束手形(やくそくてがた)とは、「決められた期日に、この金額を払います」と約束した紙の証書のことです。受け取っても、その場では現金になりません。期日を待って、銀行を通して現金化します。
受け取ったら、最初に見るのは次の3つです。
- 支払期日(しはらいきじつ):いつ現金になるかが書かれています。この期日になると現金化できます(実務では、期日の数営業日前までに取引銀行へ「取立て」を依頼しておくのが一般的です)。まずはこの日付をカレンダーに書き込みましょう。
- 金額:手形に書かれた金額が、請求した金額と合っているかを確認します。
- 振出日(ふりだしび):手形が発行された日です。この振出日と支払期日の2つがそろうと、次の章で説明する「手形のサイト(現金化までの日数)」を自分で数えられます。
実務での注意点:手形は期日が来るまで現金になりません。もし期日より前にどうしても現金が必要なときは、銀行などに手数料を払って早めに現金化してもらう「割引(わりびき)」という方法もありますが、手数料がかかります。まずは「期日まで待てば、額面どおり現金になる」が基本、と覚えておけば十分です。受け取った手形は大切な書類なので、なくさないように保管し、支払期日を管理表に必ず控えておきましょう。
でんさい(電子記録債権)と手形は何が違うのか
最近よく聞くようになった「でんさい」。これも押さえておきましょう。
でんさい(電子記録債権)とは、紙の手形を電子データに置き換えたような仕組みです。「でんさいネット」という専用のシステムの上で、「誰が・誰に・いつ・いくら払う」という記録を管理します。紙の手形とよく似ていますが、いくつか違いがあります。
| 約束手形(紙) | でんさい(電子記録債権) | |
| 形 | 紙の証書 | 電子データ |
| 現金化 | 期日に取引銀行で取立て(事前に取立依頼が必要) | 期日に自動で口座へ入金 |
| 紛失・盗難 | リスクあり(紙のため) | リスクなし(データのため) |
| 印紙税 | かかる | かからない |
いちばんの実務的なメリットは、でんさいは期日になると自動で口座に入金される点です。紙の手形のように「銀行へ持ち込む」手間がなく、なくす心配もありません。
近年は、紙の手形を減らして、でんさいや振込へ切り替えていく流れが進んでいます。とはいえ2026年時点では、まだ紙の手形を使う取引先も現に存在します。そのため、事務員としては手形とでんさいの両方の仕組みを知っておくのが安心です。
なお、手形やでんさいで受け取る前の段階、つまり協力会社(下請け)へ支払う際の請求書そのものの確認手順(金額・インボイス番号・振込先など)が気になる方は、次の記事で6つのチェックポイントに整理しています。支払い前にどこを見ればよいかを、手順として確認したい方はこちらをどうぞ。

受け取った手形のサイトを自分で数える方法【2026年時点・要確認】
手形の見方が分かったら、いよいよ「受け取った手形のサイトが何日なのか」を、自分で数えてみましょう。ここは、実際に指を折って数えるような気持ちで読んでください。
振出日と手形期日、どこを見れば「サイトの日数」が分かるか
手形の「サイト」とは、前の章のとおり「現金になるまでの日数」のことです。手形の場合、これは次の2つの日付のあいだを数えます。
- 振出日(ふりだしび):手形が発行された日(=スタート地点)
- 支払期日(しはらいきじつ)/手形期日:現金化できる日(=ゴール地点)
手形を受け取ったら、この2つの日付を探してください。多くの手形には、どちらも券面(紙の表面)に印字されています。この振出日から支払期日までの日数が、その手形の「サイト」です。「サイト=スタート(振出日)からゴール(期日)までの日数」と考えると、迷いません。
サイトの日数を実際に数えてみる(記入例:振出日3/1・期日4/30=サイト60日)
では、具体的な日付で数えてみましょう。
例:振出日が3月1日、支払期日が4月30日の手形
- 3月:1日〜31日 → 30日ぶん(振出日の3月1日を1日目として、3月末までで約30日)
- 4月:1日〜30日 → 30日ぶん
- 合計:約60日 → この手形のサイトは「60日」
つまり、3月1日に受け取ったこの手形は、4月30日にならないと現金になりません。「振出日から2ヶ月後が期日=サイト60日」ということですね。
もう1つ、読者からの疑問で多い例も見てみましょう。「サイト105日」と言われたら、振出日からおよそ105日後(約3ヶ月半後)が支払期日、という意味になります。振出日が分かっていれば、そこに日数を足していくだけで、現金化の日をカレンダーに落とし込めます。
実務での注意点:ここで注意したいのは、「振込の支払サイト」と「手形のサイト」が、二重にかかることがある点です。たとえば「末締め翌々月末払い(支払サイト約60日)」の条件で、しかもその支払いが手形(手形サイト60日)で行われると、締めてから実際に現金になるまで、合わせて120日近くかかる場合もあります。手形で受け取ったときは、「振込ならいつ入るはずか」だけでなく「そこから手形の期日までさらに何日か」を足して考えるのがコツです。
数えた日数が長いと感じたら——制度の詳しい経緯は別記事で確認する
自分で数えてみて、「あれ、うちの手形サイト、けっこう長いな」と感じることがあるかもしれません。
じつは近年、手形のサイトは短くしていく方向に動いています。2026年時点では、下請代金を手形で支払う場合のサイトについて「60日以内」が求められる方向にある、と整理されています。以前は120日といった長いサイトの手形も見られましたが、行政(公正取引委員会など)の運用が見直され、より短いサイトが求められるようになってきました。
ただし、この点は少し慎重に受け止めてください。建設工事の請負契約は、下請法(下請代金支払遅延等防止法)が直接適用される対象からは外れており、建設業法や国土交通省のガイドラインの運用が関わってきます。そのため「60日を超えたら即アウト」と一律に言い切れるものではなく、会社の規模(資本金など)や取引の形態によって扱いが変わります。だからこそ、まずは自分で手形のサイトの日数を数えて正しく把握しておくことが、いちばん確実です。そのうえで「これは長すぎないか?」と気になったときは、社長や顧問の専門家に確認しましょう。細かい線引きは会社の状況によって変わるからです。
制度が変わってきた詳しい経緯や、変更前後の比較、でんさい・現金払いへの切り替えの考え方については、建設業の下請け構造と代金支払いサイクルの記事でくわしく整理しています。数えてみて長いと感じたら、まずはその日数をメモして、社長や顧問の税理士に「この手形サイト、問題ないでしょうか」と一言確認するのが、事務員としていちばん確実な動き方です。数値や制度の最新状況は、国土交通省・公正取引委員会の公表情報もあわせてご確認ください。
なお、受け取った手形やでんさいの通知は、大切な取引書類として保存する必要があります。紙で受け取ったものをスキャンして電子データで保存する場合などは、電子帳簿保存法(電帳法)のルールが関わってきます。受け取った書類をどう保存すればよいか、保存ルールを確認したい方は次の記事をどうぞ。

入金サイト・支払サイトの理解をさらに深める
ここまでの内容で、日々の「サイトの確認」や「手形の数え方」はできるようになります。そのうえで、関連する経理処理や書類まわりで気になることが出てきた方のために、あわせて読むと役立つ記事を3つだけ厳選して紹介します。気になったものだけ、つまみ読みで大丈夫です。
元請け→協力会社(下請け)→孫請けへと、お金が会社から会社へどう流れていくか、会社間の全体像(縦の流れ)と支払期日のルールを確認したい方はこちら。

協力会社への支払い前に、届いた請求書のどこをチェックすればよいか、インボイス番号・金額・振込先などの実務手順を確認したい方はこちら。

受け取った手形・でんさいの通知や請求書を、電子データでどう保存すればよいか、保存ルールを確認したい方はこちら。

よくある質問(Q&A)
サイト・手形・でんさいについて、事務員の方からよく出る疑問にお答えします。
Q. 「サイト」と「締め日」はどう違うのですか?
答え:「締め日」は取引を区切る”1つの日付”、「サイト」は締めから支払いまでの”期間(日数)”のことです。
理由:締め日は「毎月末」「毎月20日」のように、その月の取引をいったん区切って合計する1点の日を指します。一方サイトは、その締め日を起点に、実際にお金が動くまでに何日かかるかという幅(期間)を表します。つまり、締め日という「点」を起点に、支払日までの「線(長さ)」がサイト、という関係です。
実務での注意点:この2つはセットで初めて入金日・支払日が決まります。「末締め(点)+翌月末払い(サイト約30日)」で、はじめて「翌月末に動く」と分かるわけです。管理表を作るときは、取引先ごとに「締め日」と「サイト(何ヶ月後払いか)」の両方を必ず控えておきましょう。
Q. 手形の「サイト105日」といったら、いつが支払期日になりますか?
答え:手形の振出日(発行された日)から、およそ105日後が支払期日になります。
理由:手形のサイトは「振出日から支払期日までの日数」を指すので、振出日を起点に日数を足していけば、現金化できる日が分かります。振出日が分かれば、そこにサイトの日数を加えるだけで期日を割り出せます。
実務での注意点:105日はおよそ3ヶ月半です。振出日が分からないと期日は計算できないので、手形を受け取ったら必ず「振出日」と「支払期日」の両方を確認しましょう。多くの手形には支払期日そのものも印字されているので、まずはその期日欄を見て、カレンダーに書き込むのが確実です。振込の支払サイトに手形のサイトが上乗せされることもあるため、「現金になるのはずいぶん先」というケースがある点も頭に入れておいてください。
Q. 支払サイトは長い方が自社に有利なのに、なぜ無制限に延ばせないのですか?
答え:支払う側だけが有利になりすぎると、受け取る協力会社(下請け)の資金繰りを圧迫してしまうため、法令やガイドラインで一定の歯止めがかけられているからです。
理由:確かに、払う側から見れば支払サイトは長いほど手元にお金を置いておけて有利です。しかしその裏側では、代金を待たされる協力会社ほど資金繰りが苦しくなります。この不公平を防ぐため、建設業では建設業法や国土交通省のガイドライン、(建設業以外では)下請法などによって、支払いを不当に遅らせないためのルールが設けられています。手形サイトについても、2026年時点では短縮(60日以内が求められる方向)の流れにあります。
実務での注意点:どこまでが認められる範囲かは、会社の規模や取引の形態によって変わり、一律には言い切れません。「うちは支払サイトを長くしているけれど大丈夫だろうか」と気になったら、自己判断せず、社長や顧問の税理士に確認しましょう。制度の詳しい背景は「建設業の下請け構造と代金支払いサイクル」で解説しています。
Q. でんさいと手形、結局どちらで受け取る方がよいのですか?
答え:事務手続きの手間や紛失リスクの面では、でんさいのほうが扱いやすいと言えます。ただし、どちらで受け取るかは取引先との条件で決まることが多いです。
理由:でんさいは期日になると自動で口座へ入金され、紙のように紛失・盗難の心配がなく、印紙税もかかりません。事務の負担という点では、紙の手形より軽くなります。一方で、受け取る形は自社だけで決められるものではなく、支払う側(取引先)がどちらを使うかによって変わります。
実務での注意点:どちらで受け取るにしても、確認すべきことは同じで、「支払期日はいつか」「金額は合っているか」の2点です。ここさえ押さえておけば、形が紙でもデータでも落ち着いて対応できます。なお、一人親方など小規模な取引先は、でんさいや手形の扱いに慣れていないこともあります。相手先の状況(インボイス登録の有無なども含む)は、「一人親方のインボイス対応」もあわせて参考にしてください。
Q. 入金サイトが長くて資金繰りが心配なとき、事務員は何をすればよいですか?
答え:まずは今月の「もらうお金・払うお金」を横並びの表に書き出して、いつ・いくら資金が不足しそうかを見える化し、早めに社長や上司に共有することです。
理由:資金繰りの厳しさは、「支払いが先・入金が後」という時間のずれから生まれます。この記事で紹介した横並び表を作れば、そのずれがどの時期に・いくら発生するかが前もって見えます。見えていれば、慌てて対処するのではなく、余裕を持って手を打てます。
実務での注意点:資金が足りなくなりそうと分かったときの具体的な対策(銀行への相談、手形の割引、支払条件の見直しなど)は、事務員一人で判断・実行するものではありません。あなたの役割は「早めに気づいて、正確に共有する」ことです。それだけで会社を守る大きな一歩になります。数字を並べて「この時期、支払いが先行しそうです」と一言伝えられれば、十分に役割を果たせています。
まとめ
「サイトって何ですか」と聞けなかったところから読み始めた方も、ここまで来れば、もう自分の言葉で説明できるようになっているはずです。最後に、この記事のポイントを振り返りましょう。
押さえておきたいポイント
- 「サイト」は場所ではなく期間:締め日から実際にお金が動くまでの「日数」のこと
- 入金サイトと支払サイトは裏表:もらう側が入金サイト、払う側が支払サイト。建設業の事務員は両方を同時に扱う
- 「支払いが先・入金が後」は横並び表で見える化:今月の「もらうお金・払うお金」を日付順に並べれば、資金のずれが前もって分かる
- 手形・でんさいは期日まで待つ:振込はその日に着金するが、手形とでんさいは支払期日まで現金にならない
- 手形のサイトは振出日〜支払期日で自分で数える:2026年時点では60日以内が求められる方向。長いと感じたら日数を控えて社長・税理士に相談する
建設業の「支払いが先・入金が後」という構造は、知らないうちは漠然とした不安の種でした。でも、こうして自分の手でカレンダーに落とし込み、サイトの日数を数えられるようになれば、それは「不安」ではなく「前もって備えられる情報」に変わります。分からないことは、社長や先輩に確認して構いません。むしろ、数字を並べて「この時期、資金が先行しそうです」と気づいて伝えられる事務員は、会社にとってとても頼もしい存在です。今日から一つずつ、自分の会社の条件をカレンダーに書き込んでいきましょう。
まず今日やる1アクション:自社のサイトをカレンダーに書く
この記事を読み終えたら、ぜひ今日中に、次の1つだけやってみてください。
自社の「入金サイト」と「支払サイト」を、カレンダーか手元の表に書き込む。
それだけです。元請けからの入金条件、協力会社(下請け)への支払条件を、それぞれ「◯日締め・◯日払い」の形で書き出すだけで、「いつ資金が先行しそうか」が前もって見えるようになります。難しい判断は要りません。まずは日付を書くところから始めましょう。
もう少し深く知りたくなったら、こちらもあわせてどうぞ。
会社間でお金がどう流れていくか、支払サイクルの制度的な背景を詳しく知りたい方へ

協力会社(下請け)へ実際に支払う前の、請求書チェックの具体的な手順を知りたい方へ

サイトの意味も、日数の数え方も、もう自分の言葉で説明できるはずです。今日の1行から、始めてみましょう。
