建設業経理士2級 vs 日商簿記2級|会社から「経審のために取ってほしい」と言われたら迷わず建設業経理士2級を先に取るべき理由
建設業の事務を始めてから、「普通の簿記の知識が全然使えない……」と感じていませんか? 完成工事未収入金や未成工事支出金など、聞いたことのない勘定科目ばかりで戸惑う毎日。これらは一般的な簿記でいう売掛金や仕掛品に相当するものですが、名前も仕組みも違うため、簿記3級で学んだ知識がそのまま使えないと感じるのも無理はありません。
そんな中、社長から「経審(経営事項審査=公共工事を受注するために必要な審査)の点数を上げたいから、何か資格を取ってくれないか」と言われたら、まず何を目指せばいいのか迷ってしまいますよね。
「日商簿記2級を先に取るべき?」「建設業経理士2級を直接受けてもいいの?」——この疑問を抱えて検索している方に、結論をお伝えします。建設業の事務として働いていて、会社から経審対策を求められているなら、建設業経理士2級を先に取るべきです。
この記事では、その理由を「経審の加点」「試験日程」「学習内容」の3つの軸で解説し、さらに簿記3級を持っている方に向けた具体的な学習プランまでお伝えします。
結論から言います——建設業事務なら建設業経理士2級を先に取るべき理由
「どちらを先に取るか」を考えるとき、最も大切なのは「なぜ資格を取るのか」という目的です。会社から経審対策として求められているのであれば、答えは明確です。建設業経理士2級を先に取りましょう。その理由を3つに絞って説明します。
理由①日商簿記2級では経審W点がゼロ
これが最大の理由です。
経審(経営事項審査)には「W点」と呼ばれる評価項目があり、その中に「公認会計士等の数」という項目があります。ここで建設業経理士2級の合格者が社内に在籍していると、会社の経審スコアに加点されます。
一方、日商簿記2級は経審の評価対象外です。どれだけ難しい試験に合格しても、経審のW点には1点も反映されません。
つまり、会社が「経審の点数を上げたい」と考えているなら、日商簿記2級を取っても会社への貢献はゼロ。建設業経理士2級を取ってはじめて、会社の経審スコアが上がるのです。
実務では、2級建設業経理士が1名在籍することで、W点の「公認会計士等の数」の評価に0.4の係数で加算されます。この0.4という係数は、W評点の計算式の中でスコアに換算されると、会社の経審P点(総合評定値)が数点〜十数点程度アップする効果があります。小規模な建設会社ほど1人の有資格者が持つ影響は大きく、公共工事の入札において他社との差を生む重要な要素です。
理由②試験日程が年2回のみ(CBTで受験できない)
日商簿記2級はCBT(コンピュータによるテスト)で随時受験でき、思い立ったらすぐ申し込めます。合否もその場でわかります。
しかし、建設業経理士2級は年2回(9月と3月)のペーパー試験のみです。CBTには対応していません。つまり、試験のチャンスが限られているのです。
もし「先に日商簿記2級をCBTで取ってから、建設業経理士2級を目指そう」と考えると、次のようなスケジュールになりかねません。
- 日商簿記2級の勉強に3〜4ヶ月
- 日商簿記2級合格後、建設業経理士2級の勉強に2〜3ヶ月
- 次の建設業経理士2級の試験日まで待機
結果的に、建設業経理士2級を取得するまでに半年〜1年以上かかる可能性があります。経審の審査基準日(決算日)が迫っている場合、この遠回りは致命的です。
理由③建設業の実務と学習内容が直結している
建設業経理士2級の試験範囲には、完成工事高・完成工事原価・未成工事支出金・工事未払金など、建設業で毎日目にする勘定科目がそのまま出題されます。勉強した内容が翌日の業務で使える感覚は、学習のモチベーション維持にもつながります。
日商簿記2級にも「工業簿記」という原価計算の範囲がありますが、これは製造業全般を想定した内容です。さらに「連結会計」という、親会社と子会社の財務諸表を合算する論点が含まれます。中小建設会社の事務で連結会計の知識を使う場面はほぼありません。
「今の仕事に直結する知識を学べる」という点でも、建設業経理士2級を先に取るメリットは大きいのです。
2つの資格を基本データで比較する
ここからは、建設業経理士2級と日商簿記2級を具体的なデータで比較していきます。「なんとなく」の印象ではなく、数字で違いを確認しましょう。
試験形式・実施回数・受験料・合格率
| 項目 | 建設業経理士2級 | 日商簿記2級 |
|---|---|---|
| 主催 | 一般財団法人 建設業振興基金 | 日本商工会議所 |
| 試験形式 | ペーパー試験のみ | 統一試験(ペーパー)+ CBT(ネット試験) |
| 実施回数 | 年2回(9月・3月) | 統一試験 年3回 / CBTは随時受験可 |
| 受験料 | 7,120円(税込) | 5,500円(税込)+事務手数料 |
| 合格率 | おおむね30〜45%前後 | 約15〜30%前後(統一試験) |
| 試験時間 | 2時間 | 2時間 |
| 合格基準 | 100点満点中70点以上 | 100点満点中70点以上 |
| 経審(W点)加点 | あり(2級合格者は係数0.4で評価) | なし |
| 資格の汎用性 | 建設業特化 | 業種問わず通用 |
合格率だけを見ると、建設業経理士2級のほうが高い数字です。ただし、これは「難易度が低い」というよりも「受験者層が建設業の実務経験者中心で、目的意識が明確な人が多い」という背景があります。
試験範囲の違い——建設業経理士2級にあって日商簿記2級にないもの
2つの試験は「簿記の基礎」という共通部分を持ちながら、それぞれ独自の出題範囲を持っています。
| 区分 | 建設業経理士2級 | 日商簿記2級 |
|---|---|---|
| 簿記の基本(仕訳・決算整理) | 共通 | 共通 |
| 建設業特有の勘定科目 | 出題あり(完成工事高・工事原価・完成工事未収入金など) | 出題なし |
| 工事原価計算 | 出題あり(個別原価計算が中心) | 工業簿記として出題(個別・総合・標準・直接) |
| 連結会計 | 出題なし | 出題あり(重要論点) |
| 建設業法・建設業会計基準 | 出題あり | 出題なし |
| 財務分析 | 建設業特有の比率分析あり | 一般的な財務分析 |
建設業経理士2級には「連結会計」が出題されない代わりに、建設業特有の勘定科目や工事原価計算が出題されます。建設業の事務として働いているなら、こちらのほうが「知っておくべき知識」に直結しています。
1級・2級・3級それぞれの違いや、自分にどの級が合っているかを詳しく知りたい方は、この記事もあわせてご覧ください。

難易度はどちらが高い?「難しさの質」が違う
「建設業経理士2級と日商簿記2級、どっちが難しい?」という疑問は多くの方が持っています。結論から言えば、試験としての難易度は日商簿記2級のほうが高いと言われています。ただし、「難しさの質」が異なるため、単純比較はできません。
日商簿記2級との学習範囲の重複率
建設業経理士2級と日商簿記2級の学習範囲は、おおむね6〜7割が重複しています。簿記の基本的な仕組み(仕訳のルール、決算整理、精算表の作り方など)は共通です。
違いが出るのは残りの3〜4割です。
- 建設業経理士2級だけにあるもの:建設業特有の勘定科目、工事進行基準、建設業法の知識
- 日商簿記2級だけにあるもの:連結会計、総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算
日商簿記2級の「連結会計」は、多くの受験者が苦戦する分野です。一方、建設業経理士2級の「建設業特有の科目」は、建設業で働いている方なら日常業務で目にしているため、比較的とっつきやすい内容です。
簿記3級持ちなら建設業経理士2級の勉強時間はどれくらいか
日商簿記3級を持っている方が建設業経理士2級を目指す場合、勉強時間の目安は120〜180時間程度が一般的です。「60〜80時間で取れる」という情報も見かけますが、これは工事原価計算を独学で仕上げるための演習時間を含めると不足するケースが多いため、余裕を持って計画することをおすすめします。
- 平日1〜1.5時間+土日3時間のペースなら、約3〜4ヶ月
- 毎日2時間確保できれば、約2〜3ヶ月で合格圏に到達できる計算
一方、日商簿記3級から日商簿記2級を目指す場合は、150〜250時間が目安です。連結会計や工業簿記(総合・標準・直接原価計算)など、3級からの上積みが大きいためです。
建設業経理士2級の詳しい勉強法や合格率については、こちらの記事で詳しくまとめていますので、参考にしてみてください。

「じゃあ日商簿記2級はいつ取るの?」という疑問に答える
ここまで読んで、「建設業経理士2級が先なのはわかった。でも、日商簿記2級は取らなくていいの?」と思った方もいるのではないでしょうか。もちろん、日商簿記2級にも大きな価値があります。
建設業経理士2級→日商簿記2級の順番がおすすめな理由
建設業経理士2級に合格した後であれば、日商簿記2級の勉強はかなり楽になります。理由は以下のとおりです。
- 簿記の基礎(仕訳・決算整理・精算表)はすでに身についている
- 原価計算の基本的な考え方も建設業経理士2級で学習済み
- 新たに覚える必要があるのは「連結会計」「総合原価計算」「標準原価計算」「直接原価計算」程度
建設業経理士2級を取得した後なら、日商簿記2級の追加勉強時間は50〜80時間程度で済むことが多いです。しかも、日商簿記2級はCBTで随時受験できるため、自分のタイミングで挑戦できます。
「急ぎの経審対策は建設業経理士2級で。日商簿記2級はその後じっくりと」——これが最も効率的な順番です。
両方取ると転職市場での評価が変わる
建設業経理士2級は、建設業界では非常に評価される資格ですが、他業種への転職では認知度が低いのが現実です。一方、日商簿記2級は業種を問わず「経理の基本ができる人」として広く評価されます。
両方を持っていると、以下のような強みになります。
- 建設業界内での転職:「建設業経理の専門知識がある」+「一般的な簿記スキルもある」と評価される
- 他業種への転職:日商簿記2級があるため「建設業でしか通用しない人」と思われない
- 社内でのキャリアアップ:経審対応だけでなく、一般的な経理業務もこなせるオールラウンダーとして評価される
将来的に建設業経理士1級まで目指したい方は、こちらの記事も参考になるはずです。

簿記3級持ちが建設業経理士2級に合格するための学習プラン
ここからは、「建設業経理士2級を先に取る」と決めた方に向けて、日商簿記3級を持っている前提での具体的な学習プランをお伝えします。
勉強時間の目安と使うテキスト
勉強時間の目安:120〜180時間(3〜4ヶ月)
| 学習フェーズ | 期間 | やること |
|---|---|---|
| 第1フェーズ:テキスト通読 | 3〜4週間 | 建設業経理士2級の専用テキストを1冊通読。建設業特有の勘定科目と工事原価計算の仕組みを理解する |
| 第2フェーズ:問題演習 | 4〜6週間 | テキスト付属の練習問題を繰り返し解く。特に仕訳問題と精算表は頻出なので重点的に |
| 第3フェーズ:過去問演習 | 3〜4週間 | 過去問を最低5回分解く。時間配分の感覚もつかんでおく |
おすすめ教材の選び方:
- 建設業経理士2級向けのテキスト+問題集のセットが各出版社から出ています
- 簿記3級を持っている方は「初学者向け」ではなく、「簿記の基礎がある人向け」のテキストを選ぶと効率的です
- 過去問題集は必須。建設業経理士2級は出題パターンが比較的安定しているため、過去問対策の効果が大きい試験です

経審の審査基準日から逆算した受験スケジュール
建設業経理士2級の試験日は毎年9月(上期)と3月(下期)の年2回です。ここで重要なのは、会社の経審の審査基準日(=決算日)から逆算してスケジュールを組むことです。
例えば、会社の決算が3月の場合を考えてみましょう。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 4月〜5月 | 建設業経理士2級の9月試験に向けて学習開始。申し込み期間を確認し、忘れずにエントリー |
| 7月〜8月 | 過去問演習に集中。苦手分野を潰す |
| 9月 | 建設業経理士2級 受験(上期試験) |
| 11月頃 | 合格発表。合格していれば、翌3月決算の経審に間に合う |
| 翌3月 | 会社の決算日(経審の審査基準日)。この時点で合格者として常勤在籍していればW点に反映 |
注意点:建設業経理士2級の申し込み期間は限られています。「受けよう」と思ったときに申し込み期間が過ぎていると、次の試験まで半年待つことになります。思い立ったらすぐに建設業経理検定の公式サイトで次回の申し込み期間を確認してください。
建設業経理士2級の勉強法・合格率・テキスト選びをさらに詳しく知りたい方へ
スケジュールの立て方から使うテキストまで、実務目線でまとめた詳細ガイドがあります。


また、2021年(令和3年)4月の建設業法施行規則の改正により、建設業経理士の経審評価に有効期限が設けられました。令和5年3月末で経過措置が終了し、現在は合格した日の属する年度の翌年度の開始日から起算して5年間が経審に反映される期間となっています。資格自体は一生有効ですが、経審のW点に反映されるのは5年間です。5年を超えた場合は、所定の登録経理講習(CPD講習、費用:18,000円・税込)を修了することで再び経審の評価対象となります。
よくある質問(Q&A)
Q. 日商簿記3級しか持っていなくても、建設業経理士2級を直接受験できますか?
A. はい、受験できます。建設業経理士2級に受験資格の制限はなく、誰でも受験可能です。
日商簿記3級の知識があれば、簿記の基本(仕訳のルール・勘定科目の考え方・決算整理)はすでに理解できているはずです。建設業経理士2級では、この基礎の上に建設業特有の勘定科目や工事原価計算が加わるイメージです。
実務での注意点として、簿記3級の知識だけで受験する場合、工業簿記(原価計算)の考え方は初めて学ぶことになります。テキストの「原価計算」の章は特に丁寧に取り組みましょう。
Q. 建設業経理士2級を取っても、5年で経審に使えなくなると聞きました。本当ですか?
A. 資格そのものは一生有効ですが、経審のW点に反映されるのは合格した年度の翌年度から5年間です。
2021年(令和3年)4月施行の改正で導入されたこのルールは、令和5年3月末に経過措置が終了し、令和5年4月1日以降の審査基準日から完全適用されています。5年を過ぎた場合は、建設業振興基金が実施する登録経理講習(CPD講習)を修了することで、再び経審の評価対象になります。
実務での注意点として、この有効期限の管理は会社の経審申請担当者(行政書士に依頼している場合はその事務所)と共有しておくことが大切です。「取ったら終わり」ではなく、5年ごとの更新が必要であることを会社にも伝えておきましょう。
Q. 日商簿記2級を先に取ってから建設業経理士2級を受けた方が、合格しやすいですか?
A. 確かに合格しやすくはなりますが、経審対策が目的なら遠回りです。
日商簿記2級を持っていると、建設業経理士2級の勉強時間は短縮できます。しかし、日商簿記2級自体の取得に150〜250時間かかることを考えると、トータルの勉強時間は大幅に増えます。
- 簿記3級 → 建設業経理士2級:120〜180時間
- 簿記3級 → 日商簿記2級 → 建設業経理士2級:200〜300時間以上
経審の審査基準日が迫っている場合は、最短ルートである「簿記3級→建設業経理士2級」を選ぶほうが合理的です。
Q. 建設業経理士2級と日商簿記2級の勉強を同時に進めることはできますか?
A. 可能ではありますが、おすすめしません。
両試験の学習範囲は6〜7割重複していますが、残りの部分はまったく別の内容です。同時並行で勉強すると、建設業特有の科目と連結会計が混在して混乱しやすくなります。
実務での注意点として、限られた勉強時間(平日夜や土日)を2つの試験に分散させると、どちらも中途半端になるリスクがあります。まず建設業経理士2級に集中して合格し、その後に日商簿記2級に取り組むほうが、結果的に効率が良い進め方です。
Q. 建設業経理士2級を取得しても、会社を辞めたら意味がなくなりますか?
A. 資格は個人に帰属するため、会社を辞めても資格自体はなくなりません。
建設業経理士2級は「会社の経審に加点される」という側面が強い資格ですが、資格そのものはあなた個人のものです。転職先が建設業であれば、引き続き経審加点要員として評価されます。
実務での注意点として、建設業以外の業種では認知度が低い資格であることは事実です。だからこそ、本文でも触れたとおり「建設業経理士2級を取得した後に日商簿記2級も取得する」という流れが、転職市場での汎用性を高めるうえでもおすすめです。
まとめ
この記事では、「建設業経理士2級と日商簿記2級のどちらを先に取るべきか」という疑問に対して、会社から経審対策を求められている方の視点でお答えしました。
要点を整理します。
- 経審のW点に加点されるのは建設業経理士2級のみ。日商簿記2級は経審では評価されない
- 建設業経理士2級は年2回(9月・3月)のペーパー試験のみ。受験機会が限られるからこそ早めの準備が大切
- 簿記3級を持っていれば、建設業経理士2級の勉強時間は120〜180時間が目安(3〜4ヶ月)
- 建設業経理士2級に合格した後、日商簿記2級をCBTで取得するのが最も効率的な順番
- 両方取得すれば、建設業界でも他業種でも評価される強力な資格の組み合わせになる
「会社のために資格を取らなきゃ」と焦る気持ちは自然なことです。でも、方向さえ定まれば、あとは一歩ずつ進むだけ。建設業経理士2級は、建設業で働く方にとって「取ってよかった」と実感できる資格です。
次の試験日まであと何ヶ月あるか、まずは建設業経理検定の公式サイトで確認するところから始めてみてください。今日動けば、次の試験に間に合います。
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※ この記事は2026年5月時点の情報にもとづいて作成しています。合格率・受験料・制度内容は変更される場合がありますので、最新情報は建設業振興基金の公式サイトでご確認ください。
